AIの台頭、急激な物価高、そしてWebアクセス数の劇的な減少。この1年で、私たちを取り巻くビジネスの前提は大きく根本から覆されました。従来のSEOやWEB広告戦略が機能不全に陥り、頑張っても成果が出ないといった消耗戦に陥っている企業がほとんどです。しかし、今起きているのは単なる景気後退ではありません。「情報の流通構造」と「人の購買行動原理」が同時に、不可逆的に変化したのではないかと感じています。
検索とアクセスが激減した、2つの理由
1. Google検索の終焉と「ゼロクリック時代」の到来
AIによる自動要約(AI Overviews)の普及は、ユーザーの疑問を検索結果ページ内で完結させることができます。クリックなしで答えを得る「ゼロクリック」が常になり、Webサイトへの流入が激減します。
また、情報探索の主戦場はGoogleからInstagramやTikTokなどのSNSへと移っています。若年層は信頼性の高いレビューや短尺動画を求め、Webサイトを経由する「ブラウザによる検索行動」そのものが過去のものになりつつあります。
2. 消費マインドの冷え込みが追い打ちをかける
日本では実質所得の伸び悩みが続く中、企業も個人も「比較検討」や「新規投資」を控える消極的な消費行動にシフトしています。結果、「買わない」「依頼しない」という状態が定着し、Web上での「購入」や「依頼」に至るまでのハードルは劇的に高まりました。
LP・広告・SEOは「機能不全」に陥った
どんなにLPを磨き、高額な広告を投じ、SEOで上位を確保しても、「見られない」「読まれない」「信用されない」という三重苦になっています。
そこで、誰もがテンプレートやコンテンツを作れる今、成否を分けるのは「何を作るか」ではなく、「誰が発信しているか」です。
仕組みやデザインといったものではなく、その人が持つ「声」や「熱」が問われているわけです。Webビジネスの「仕組み」の限界に直面した今、私たちは「人」を中心としたビジネス構造へ回帰しなければなりません。
AIには代替できない「関係性の資本」を築く
AI時代の勝者は、AIが苦手とする「人間的な信頼」と「関係性」を強みにできる企業です。
自動化の仕組みで完結させるのではなく、「人が介在する接点」を意図的に設けること。丁寧なヒアリング、きめ細やかな提案、リアルな対話など、信頼で解決するビジネスが求められるのではないかと思います。
「人間」軸にシフトするのためには
- 既存顧客との「関係資産」を棚卸しする
定期的なZoom/訪問、価値提供の近況報告を行い、「売上」ではない「関係性」を再点検する。 - 固定収益化「サブスク」モデルへの転換
顧問契約・定期ミーティングなど、アナログを中心とする安定したキャッシュフローを生む設計を強化する。 - 共感を呼ぶ「人間性の発信」を強化する
代表者や社員の顔やストーリーを軸にしたブログや動画、顧客の事例を感情的に深く掘り下げて積み上げる。 - 信頼を「視覚化」し「温度」を伝える
WebサイトやSNSで「顔・声・物語」を積極的に開示し、機械的ではない「温度のある会社」を印象づける。
勝敗は「検索順位」ではなく「心の占有率」で決まる
AIが奪うのは、誰もがアクセスできる「情報」の量です。しかし、「信頼」と「人間的な関係性」だけは、決して奪えません。
これからのビジネスの勝敗は、検索順位やアクセス数といった「数字」の向こう側にある、「どれだけ人の心に深く残ったか」という「心の占有率」で決まります。
Webの時代は終わりました。次は、仕組みより「人」で勝つ、「人間の時代」の幕開けといってもいいのではないでしょうか。