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デザイナーに求められるタイポグラフィ・デザイン:プロの「整える力」

広告やWebで語られる「良いデザイン」は、色や形の美しさに注目されがちですが、優れたデザインとは、読みやすさと伝わりやすさを担保し、見る人が心地よく読み進められる構造を整えることです。

たとえば、情報のリズムや呼吸、視線の流れを整える力などの”タイポグラフィによる繊細なリズム設計”があることです。おしゃれな装飾や色・形はこれらの基礎ができた上で初めて効果的になります。

この記事では、こうしたデザインの”リズムの整え方”についてお知らせしたいと思います。ぜひさいごまでお読みください。

目次

1. 「心地よく読ませる呼吸」の設計

人は文章を読む際、言葉の内容に入る前に、無意識に「見た目のテンポ」や「行間の呼吸」を感じ取ります。タイポグラフィ・デザインとは、この読者の感覚に訴えかける「心地よい呼吸」を担保することです。

  • 間のルール化(休符の設計):音楽に休符があるように、情報と情報の間に存在する適切な「間(ま)」を設けます。行間や段落間に一定のルールを適用することで、読者が無理なくページを追える自然なリズムを創造します。
  • 信頼性の構築:呼吸のないタイポグラフィは「詰まった印象」を与えますが、呼吸を感じる構成は「自然で品のある」印象、ひいては「信頼できる」「丁寧に作られている」という無意識の感覚を読者に残します。

2. 「視線の流れ」という誘導設計

多くの人がデザインを“見た目の工夫”だと誤解しますが、タイポグラフィ設計の本質はその逆です。余白や文字の配置、階層構造のすべては「読者の目をどこに導くか」という誘導設計のために存在します。

  • 視線の滑らかさ:人の視線の自然な動き(左上から中央、そして右下へ)を阻害しないよう、見出し、本文、装飾の配置と余白を綿密に整えます。視線の流れを“滑らかに導く”ことこそが、プロフェッショナルなタイポグラフィの仕事です。
  • ストレスの排除:タイポグラフィにおける間隔がバラバラだと視線が跳ね、読者は無意識にストレスを感じます。情報のリズムが崩れていると、良い文章であっても「読みづらい」と評価されます。

3. 「感覚の再現」をこころがける

心地よく読ませることは、技術だけでなく感覚の再現が重要です。多くの人は教科書や書籍、雑誌のような、均整の取れた構造や一定のリズムを「美しい」と感じる習性があります。

  • リズムを与える:句読点の打ち方、改行の位置、行頭の揃えなど、これらはすべて、読む体験そのものをデザインし、読者に安心を与えるリズムを設計しています。
  • 品格を与える:目立たせることではなく「整えて、伝わりやすくすること」です。タイポグラフィにおける「整える精度」こそが、フォントやテーマに関わらず、作品に“品格”を生み出すのです。

Webデザインこそ意識を高める必要がある

Webデザインでは、SEOを意識したコーディングルールやレスポンシブ対応など、さまざまな制約がありますが、より「整える」意識を持つことが重要です。

自由度が低い環境ほど、余白・行間・文字サイズの一貫性が全体の品質を左右します。特に、無料テーマやCMSのデフォルトデザインは、汎用性を重視するあまり最低限のデザインにとどまっています。

だからこそ、CSSの設計ルールを明確に決めて統一しないと、心地の悪いデザイン(=質の低いデザイン)になってしまいます。

グリッドや余白単位を揃え、どのデバイスでも情報のリズムと視線の流れが崩れないように設計すれば、装飾に頼らずとも整然と美しいデザインを実現できます。

まとめ:読む人の目線で呼吸を設計する

デザイナーは、「読む人の目線で呼吸を設計する」という原則を徹底する事が美しいタイポグラフィ・デザインの第一歩です。

どこで目を止め、どこで息を抜くか。こういった設計ができていれば、自ずと美しいタイポグラフィが成立します。

読者が無意識に“美しい”と感じる瞬間、それは視線の流れと呼吸が完璧に調和した時ではないかと思います。

美しさは作るものではなく、タイポグラフィという情報のリズムを徹底的に整えることで生まれるのです。

ぜひ実践してみてください。

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