「サイト引っ越し」はドメイン移管から考えるのが安心
サイトの引っ越しというと「サーバー移行」だけをイメージしがちですが、実際にはドメインの管理会社(レジストラ)を移す「ドメイン移管」から見直すケースも少なくありません。
「メールや請求管理がバラバラで分かりにくい」「今使っているドメイン会社の管理画面が使いづらい」「サーバーとドメインを同じ会社にまとめておきたい」──こうした理由から、ドメイン移管とサーバー移行をセットで行う“サイト引っ越し”を検討される企業様が増えています。
本記事では、ドメイン移管を入り口にしたサイト引っ越しの流れを整理しながら、WordPressサイトを安全に新環境へ移すポイントを解説します。
まず整理したい:ドメイン移管とサーバー移行の違い
「引っ越し」と一言でいっても、下記のように役割が異なります。
- ドメイン移管: 「example.com」などのドメインの管理会社(レジストラ)を別会社へ移すこと。
- サーバー移行: Webサイトのデータ(WordPress・HTML・画像など)を別のサーバーへ移すこと。
- DNS切り替え: ドメインがどのサーバーを見に行くかを決める「住所録(DNS)」の設定変更。
ドメイン移管を先に行う場合は、「ドメインの管理場所を移す」→「サイトの中身(サーバー)を移す」という二段構えになります。それぞれの作業がサイトの表示やメールに影響するため、手順とタイミングをきちんと押さえておくことが重要です。
ドメイン移管から始めるサイト引っ越し:全体の流れ
ドメイン移管を含めたサイト引っ越しは、大きく次の4ステップで考えると整理しやすくなります。
| ステップ | やること | 主なポイント |
|---|---|---|
| STEP 1 | 現状の契約状況を整理する | ドメイン管理会社・サーバー会社・メール・更新期限を洗い出し、最終的にどの会社にまとめるかを決める。 |
| STEP 2 | ドメイン移管を完了させる | ロック解除・AuthCode取得・連絡先メールの確認を行い、新しいレジストラで移管申請〜承認まで進める。 |
| STEP 3 | 新サーバーにサイトを構築する | バックアップ取得 → 新サーバーにWordPress一式を設置 → データベースをインポートし、wp-config.phpを新環境に合わせる。 |
| STEP 4 | DNS切り替えと動作確認 | ネームサーバー/Aレコードを新サーバーに切り替え、サイト表示・メール・SSL・パーマリンクを最終チェックする。 |
以下、それぞれのステップで押さえておきたいポイントを見ていきます。
ステップ1:現状の契約状況を整理する
- ドメイン管理会社: どの会社でドメインを管理しているか(ムームードメイン、お名前.com、さくら、Xserverドメインなど)。
- サーバー会社: 現在のWebサーバーはどこか(さくら、Xserver、ロリポップ、他社など)。
- メールの扱い: メールアドレスはサーバー側で運用しているか、別サービス(Microsoft 365 / Google Workspaceなど)か。
- 更新期限: ドメインの有効期限がいつまでか(移管前後で失効しないよう要確認)。
この段階で、「最終的にどの会社に何をまとめたいのか」を決めておくと、後の作業がスムーズになります。
ステップ2:ドメイン移管の準備と手順
次に、ドメインの管理会社を移す作業です。一般的な流れは以下の通りです(細かな手順は各社の仕様によって異なります)。
- ① ロック解除・移管制限の確認: 現在のレジストラ側で、ドメイン移管ロックがかかっていないか確認し、必要に応じて解除します。
- ② 認証コード(AuthCode/EPPコード)の取得: 移管に必要な認証コードを、現レジストラの管理画面から取得します。
- ③ 管理連絡先メールアドレスの確認: Whois情報や登録情報に設定されているメールアドレスが受信できる状態か確認します(移管承認メールが届きます)。
- ④ 新しいレジストラで移管申請: 移管先のドメイン会社で、対象ドメインを検索→「移管」メニューから認証コードを入力して申請します。
- ⑤ 承認メールの対応: 旧レジストラ/新レジストラから届く承認メールの案内に従い、移管を承認します。
ドメイン移管そのものは、基本的にはDNS設定を変えない限り、サイトの表示に大きな影響は出ません。ただし、移管中は設定変更ができない期間が発生することもあるため、サーバー移行のタイミングと被りすぎないようスケジュールを組むことが大切です。
ステップ3:新サーバーにサイトを構築する(WordPressサイトの場合)
ドメイン移管の手続きと並行して、あるいは完了後に、新サーバー側でサイトの中身を準備していきます。WordPressサイトの場合の基本ステップは次の通りです。
- バックアップの取得: 旧サーバーから、WordPressファイル一式(本体・テーマ・プラグイン・アップロードファイル)とデータベースのバックアップを取得します。
- 新サーバー環境の確認: PHP・MySQLのバージョンやディスク容量など、WordPressが動作する条件を満たしているか確認します。
- ファイルのアップロード: FTP/SFTPでWordPress一式を新サーバーの公開ディレクトリにアップロードします。
- データベースのインポート: 新サーバー側で空のデータベースを作成し、旧サーバーからエクスポートしたSQLをインポートします。
- wp-config.phpの設定変更: 新データベースの情報(DB名・ユーザー名・パスワード・ホスト名)に書き換えます。
この段階では、まだDNSを切り替えていないため、一時的なテストURLやhostsファイルの書き換えなどを使って、新サーバー側のサイト表示を確認する方法もあります。
ステップ4:DNS切り替えと最終確認
ドメイン移管が完了し、新サーバー上のサイトも問題なく表示できる状態になったら、最後にDNSの切り替えを行います。
- ネームサーバー or Aレコードの設定: 移管先レジストラの管理画面で、ドメインのネームサーバーを新サーバー会社のものに変更するか、Aレコードを新サーバーのIPに向けます。
- 反映待ち: DNSの反映には数時間〜72時間ほどかかる場合があります。この間は場所によって旧サーバーと新サーバーが混在することもあるため、旧サーバーはすぐに削除しないようにします。
- サイト表示・メール動作の確認: Webサイトの表示に加え、ドメインメールを利用している場合は送受信テストも行います。
- パーマリンクとSSLの最終チェック: WordPress管理画面の「設定」→「パーマリンク」で一度「変更を保存」し、httpsで問題なくアクセスできるかも確認します。
ドメイン移管からの引っ越しでよくあるつまづきポイント
- 移管中にドメインの有効期限が切れそうになった: 有効期限間近での移管はトラブルの元です。余裕を持ったスケジュールで動きましょう。
- メールが一時的に届かなくなった: DNS切り替え時に、MXレコードの設定ミスや反映待ちでメールが不安定になることがあります。重要なやり取りが少ないタイミングを選び、テスト送受信を行いましょう。
- SSL証明書の再設定を忘れた: 新サーバー側でSSLの再発行・再設定を忘れると、「この接続ではプライバシーが保護されません」といった警告が出てしまいます。
- 旧サーバーをすぐに解約してしまった: DNSが完全に切り替わる前に旧サーバーを止めると、一部のユーザーだけ404エラーになるケースがあります。最低でも数週間〜1か月程度は残しておくと安心です。
まとめ:ドメイン移管+サーバー移行を「計画的なサイト引っ越し」に
ドメイン移管から始めるサイト引っ越しは、「どの会社で何を管理するか」を整理し直す良い機会です。一方で、ドメイン・DNS・サーバー・メール・SSL といった複数の要素が絡むため、行き当たりばったりで進めるとトラブルにつながりやすくなります。
本記事でご紹介したステップを参考に、現状の整理 → ドメイン移管 → 新サーバー構築 → DNS切り替えという流れを意識しながら、計画的に作業を進めてみてください。
もし、「自社だけで進めるのが不安」「途中でつまずいたときに相談できる相手がほしい」と感じられた場合は、サイト引っ越しやWordPress移行を専門にしている外部パートナーに相談するのも一つの方法です。大切な自社サイトを守りながら、安心して新しい環境へ移行していきましょう。


